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  私は、旧制中学の2年生までの絵の授業以来60年余り、絵筆を持ったことが無かった。
 また、卒業した大学は理科系で、就職した職場は製造現場での工場管理で仕事に追いまくられていたので、文化芸術には疎い、偏った人間のまま馬齢を重ねてしまった。
 70歳でいよいよ全ての役職を退き、さてこれから老化を防ぐためには何をしたら良いだろうかと思案した。碁会所に通うか、カルチャーセンターにでも行って勉強でもしようかと試みてはみたが、どうも気に入らず挫折した。
 ところが、昨年私の友人の紹介で、思いがけず,この近くに住んでおられる著名な画家 奥津国道さん と出会う機会があり、その方の勧めで、一心発起して水彩画の手習いをすることにしたのである。
 私は、この道の感性に弱いことを自覚しているが、先生は「自然を見る目を養うと世界が変わるよ」、「私は貴方に絵を教えるのではなく、絵を描きたい気持ちにさせ、あなた自身の絵が描けるようにしてみせる」といわれたことで、俄然勇気が湧き、昨秋からスケッチと着彩の手習いをはじめたわけである。
 さて、いつまで挫けずに続けられるかが問題であるが、兎に角頑張ってみるつもりだ。
 足腰が弱らないように、野山を歩くのもまた良いことだろうと両天秤を狙っている。
 憂国の詩人ヘルマンヘッセが絵を描くということは、本を紹介されるまでは全く知らなかった。この中にある彼のような気持ちになって、今年は近郊を行脚して、自然や風物に接してみたいと考えている。
                          平成12年6月 
 
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 私の画の先生 奥津国道氏の作品
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